リュシアン・デルリューの作品

https://www.youtube.com/watch?v=gdEthnbLZ4A&t=1530s

ソナタ ト短調

このピアノ曲は、又チェロとピアノの為の昨品でもあり、リュシアン・デルリューのもっとも主要な昨品である。第二次世界大戦中を含めて、1947年2月に完成しており、数年に渡って推敲された結果生まれた果実である。

そこには、音楽的に色々な影響が伺える:バロックから、ベートーヴェン、リストに至る音楽史の時間と、又セザール・フランク、ロシアの作曲家等、空 間的にも広く駆け巡る要素が含まれており、20世紀のフランス人作曲家としては、オリジナルな出来になっている。リストのソナタロ短調のように、それにな らって、まさしく音楽劇となっている。

リュシアンは、自分自身の人生を、音の世界に持ち込み、家族紛争がもたらした痛々しい経験の中で、それらの戦いとその悲痛さ、まるでキリストの十字架の道を地で行くようなそれらの日々を、音楽で、もの語っていると思われる。この間、リュシアンは強い鬱病にまで みまわれるが、ついには、これより回復し、自身の内的勝利を獲得することになる。

ロマンチックであり同時に近代的なこの昨品は、彼自身の返り咲きとも言える、内面再生の到達を意味する象徴でもある。これが、この昨品の性格が、起伏が多いと同時にとてもストイックな状態を保つべく努力を感じさせる由来である。作曲者自身が味わった、病と、貧困と、すさまじい孤独に加えて、戦争下と言う悲惨な日々を生き抜く為に払われた、膨大な努力とたゆみない意志を証明するかのようである。これゆえ、作品が、ベートーヴェンにも共通するように、時には悲痛に満ちた大変暗いものであるにも関わらず、病的で不健全なイメージを与えることなく、常に健全な印象を保っている。

この曲が、時に、かたい印象を与えるのも、形式的と言うよりも、心理的構造から来るものである。

聴くものにとって、作曲者が心から語りかけるこの音楽は、分かり安いものであるかと思われる。三楽章からなり、全体を通して調性のある、クラッシクがたを保ちながら、ジプシー音階からなる主旋律が、循環的に遍在し、ゆえに、調性は不明瞭で、様々なヴァリエーションにつながる。

不運のテーマとも言えるこのテーマは、曲全体に駆け巡り、この曲を作り上げている。まるで一つの固執観念のように、曲全体にまとわりつき、これはベルリオーズの幻想交響曲をも思わせるが、これが他のテーマを吸収し、終桔する。ドン・ジョヴァンニの指揮官の銅像のように、不動で、無慈悲で、冷酷で、かつ陰うつなこのテーマは、このソナタの悲劇の主人公である。他のテーマは、それに関連して存在する。

このテーマは、かなり長期に渡って熟考されており、これはこの曲が、長年に渡る研究の結果生み出されたものであることを、物語っている。この曲に見られる同じ要素のものが、すでに他の昨品の中に表れているのも、作曲者がこの曲に費やした、年月の長さを感じさせる。

この曲におけるピアノ演奏上のテクニックは、連続する複雑な和音、指の拡張、オクターブ、ポリフォニー、力強さ、突然又は敏速な広音域に渡る移動、炸裂するアルペジオなど。

リシャール・デルリュー